2026/01/27 12:51

― お遍路の道を“かたち”に残すもの ―

お遍路の持ち物の中で、もっとも象徴的な存在が「納経帳(のうきょうちょう)」です。
表紙を開いた瞬間から、それは単なる帳面ではなく、巡礼の記録であり、祈りの積み重ねとなります。



■ 納経帳は「御朱印帳」とは少し違う

近年は神社仏閣巡りが身近になり、「御朱印帳」という言葉も広く知られるようになりました。
納経帳も見た目はよく似ていますが、意味合いは少し異なります。

納経帳は本来、
お経を納めた証としていただくもの。
つまり「参拝しました」ではなく、「手を合わせ、お経を唱え、祈りを納めました」という行為の記録です。

現在では、お経を唱えられない場合でも納経していただけますが、
その背景にある意味を知っておくと、一つひとつの参拝がより深い時間になります。



■ 何が書かれているのか

各札所で納経帳に記されるのは、

・札所番号
・寺院名
・ご本尊名
・力強い墨書
・朱印

これらが一体となり、その寺で過ごした時間を封じ込めます。
一寺一寺、筆の表情が異なるのも魅力で、巡礼を終えた後に見返すと、その日の天気や心境まで思い出されることがあります。



■ いつ、どこで出すのか

基本的には、
本堂・大師堂の参拝を終えた後に納経所へ向かいます。

納経帳は静かに両手で差し出し、御朱印料を納めます。
「お願いします」「ありがとうございます」とひと言添えるだけで十分です。
納経は作業ではなく、人と人とのやりとりでもあります。



■ 納経帳は旅の途中で汚れてもいい

きれいに保ちたい、と思う気持ちも自然ですが、
雨に濡れた跡、墨が少しにじんだページ、角の擦れ。

それらすべてが、実際に歩き、巡った証です。
納経帳は完成した瞬間よりも、使われている途中の姿こそ美しいものかもしれません。



■ 最後に

納経帳は、ゴールのために持つものではなく、
道中を丁寧に歩くために持つもの。

ページをめくるたびに、
「今日も一ヶ所、お大師さまに近づいた」
そんな感覚を与えてくれます。